2015年2月2日月曜日

北東北の京都、秋田

今から80年前の昭和10年5月に秋田に訪れた
建築家のブルーノ・タウトの著書「日本の家屋と生活」に掲載された写真。
版画家勝平得之のガイドで秋田市の町家を見て回った際に同行者が撮った写真です。
この一年後の昭和11年にすぐそばの平野政吉氏の米蔵にて
藤田嗣治の「秋田の行事」が世界最速最大サイズで描かれました。



写真に写る手前の町家と右奥の蔵は今でも残っています。
町家は大分手が加えられていますが屋根はそのままの状態で残っています。
しばらくは取り壊される事は無さそうです。





しかし問題は蔵です。
手塚薬舗は数年前より空き店舗のまま。
建物は一目見てすぐにでも何らかの改修が必要だと言える程痛んでいます。






ブルーノタウトは初めて桂離宮を世界に紹介した建築家としても知られています。

「秋田はまさに北東北の京都といえる。」

それほどまでに秋田市の一つ一つの町家の魅力に高い評価をし、
秋田市の町並みの美しさに感銘を受け
その証拠に翌年の冬にも秋田を訪れています。

すぐそばにある唯一オリジナルの状態で一般公開されている金子家のように
大きな町家を再生するのはお金も時間もかかりますが
それに比べると蔵は間仕切りも無く床も土間なので
町家を一軒再生する程難しい事ではないと思います。

立地的にも中心市街地ですので仮に店舗として活用するならば
ビジネス的にもチャンスが大きいと思います。

どのように再生してどのように活用するのかはすぐには決められないとして、
少なくてもこの貴重な文化財が解体されてしまうのだけは避けたい所です。

同じ様に文化的価値のある伝統建築は私たちの身近にけっこう残っています。
特に、新屋、牛島、旭南には何軒かまとまって残っていますし
大町、中通地区も点在してはいるものの徒歩圏内です。

新屋へは秋田駅からバスでも電車でも行けますし
通町から大町、旭南商店街、牛島までであれば
頑張れば徒歩で、あるいは自転車でも行けますし一部循環バスも運行しています。

まずは回遊型のイベントを開催したり、
それをきっかけに各空き家が魅力的な店舗で埋まっていき
息を吹き替えすようになったら
秋田市は住む人にとっても訪れる人にとっても
魅力的なまちになっていくことでしょう。

昨今の空家問題が深刻化されている今こそ
伝統的建築物が他の空き家と一緒くたに扱われる事がないよう
多くの人が文化財としての価値に気が付いて欲しい物です。